現行の5軸制御加工用のCAMは,CLデータを生成するメインプロセッサと,
加工機の制御用データであるNCデータに変換する
ポストプロセッサに分離しているため,
CLデータを生成する段階で加工機の運動を考慮することができない.そのため,
回転軸の急激な変化や反転など,加工誤差の原因となる機械運動を含んだNC
データに変換されるCLデータを出力する恐れがある.また,
機械運動が複雑な多軸制御加工では,駆動軸の追従性や機械剛性の低下などから,
望むような加工精度が得られない場合がある.このような問題に対処するには,
CLデータを生成する段階で機械情報を参照し,
機械運動を考慮したCLデータを生成する必要がある.
本研究では,加工機の回転2軸の位置を1 点で表すコンフィギュレーション空間
(Configuration Space, C-Space)を適用し,
各切削点において回転2軸の動きを考慮して工具姿勢を決定する.これにより,
加工誤差の原因となる回転2軸の反転を回避したCLデータを生成する.さらに,
使用する回転2軸の数を抑制することにより,固定1軸+同時4軸加工,
さらには,固定2軸+同時3軸加工となるCLデータを生成し,
機械剛性を保持した加工を行う.最後に,提案する工具経路生成法をCAMに実装し,
オーバーバング部を有する溝形状を対象として,CLデータの評価,
加工シミュレーションおよび加工実験を行い,
提案する手法の有用性について検討する.