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Haptic Deviceを用いた多軸制御工作機械操作インターフェイスの開発
(第1報, 切削感覚の呈示と工具干渉の回避)

森重功一,山本良輔

日本機械学会論文集 C編,第75巻, 第752号 (2009.4) pp.1187-1193.

 すべての工作手段の中で,最も自由度が高く汎用的なものは, 人による手作業であるが,力不足であり,失敗も生じやすく,精度も保証できない. そのため,CNC化された工作機械によって,生産効率や加工精度の向上が図られてきた. 現在では制御軸数をさらに増加させることにより, 自由曲面やオーバーハング部を有する形状の加工が可能となった 多軸制御工作機械が広く利用されている.
 多軸制御加工の場合は,機械の複雑な動きを実現するために, 主にCAMなどで作成したNCデータを事前に用意して用いるが, 作業者が意図する動きを反映したNCデータを作成するには, 多くの時間と知識が必要となる.そのため, 独自の手法を適用した工具経路の自動生成に関する研究が多く見られる.
 一方,試作品や金型などの一品ものの加工の場合は, 些細な加工の場合でもCAMによる作業の段階から検討しなければならず, 効率が悪くなる.NCデータを用いずに加工する場合は, 機械に付属したインターフェイス機能を利用して,機械を直接操作することになるが, 多軸制御工作機械の操作は汎用機より煩雑で難度も高く, 導入から実際の運用までには,ある程度の時間とコストを要する. また,現在の工作機械の操作パネルの仕様も,数十年間大きな変更は見られず, 操作性を意識したものとは言い難い.以上のような背景から, 作業者が機械の複雑な特性を意識することなく容易に操作できるように, 作業者と工作機械の間を取り持つインターフェース機能 について検討する必要があると考える.
 物体の位置と姿勢を呈示するためのインターフェイス機器として, バーチャルリアリティの分野で研究されている Haptic Deviceをあげることができる. Haptic Deviceは,仮想空間を操作するための道具であり, ディスプレイなどに表示された計算機内の仮想オブジェクトに触るなどの操作を すると,衝撃や反動,振動,惰性,慣性などの物理的な力覚が作業者に伝達され, 重さや硬さとして感じることができる.HDは,その応用が他の分野へ拡がりつつあり, 最近では,加工作業への適用についての報告も見られる.
 本研究は,多軸制御工作機械を操作するための新たなインターフェース機器として Haptic Deviceを用いることにより,複雑な形状であっても, 従来の手法より直感的かつ効率的に加工できる機能を開発することを目的としている. 本報では,開発の第一段階として,システムが具備すべき基本機能について検討し, 加工状況の描画および切削感覚や工具干渉を呈示する機能を プログラムとして実装した.さらに,開発したプログラムを用いて出力した工具位置 ・姿勢を,工具経路データとして行った検証実験の結果について報告する.

システム運用の予想図 
IMS Lab. http://www.ims.mce.uec.ac.jp/
Last updated on May 7, 2009 by www-admin@ims.mce.uec.ac.jp