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カッティング作業における操作性を考慮した産業用ロボットの動作計画

青山一郎,森重功一

精密工学会誌,75巻 8号 (2009.8) pp.1010-1014.

 現在,自動車の内装材として用いられるFRPやカーペット等を含んだ複合材料の カッティング作業には,ウォータートリム機を用いた加工が主流となっている. しかし,ウォータートリム機は大型のものが多く, 設置場所に広い面積が必要であるうえに, 大きな動力が必要となるためランニングコストがかかる. そのため,生産性の向上や低コスト化が阻まれている.
 現在,産業用ロボットに刃物を持たせ,カッティングを行う手法が提案されている. この手法では,切断時に水を使用しないため, 後処理や防音のための周辺設備が不要となり設置面積を縮小できること, 産業用ロボットを用いることにより設置レイアウトの自由度が増し, 多品種少量生産に迅速に対応できること, 高圧水のような大きな動力を必要としないためコストの削減が期待できること, さらにバリのない切断面を得ることができるなど, ウォータートリム機と比較して多くの利点を持っている.
 本研究は,カッティング作業用のロボット動作プログラムを, CADデータを用いてコンピュータ上で自動生成する オフラインティーチングシステムの開発を目的としている. 産業用ロボットの経路の自動生成に関する研究は従来から行われているが, スポット溶接のように初期姿勢から目標姿勢に至るまでの動作計画では, ロボットの姿勢の変化がなるべく少なくなるように経路を生成し, アーク溶接,バリ取り,研磨作業のように連続的な工具の位置・ 姿勢の教示が必要な作業の動作計画では,加工面のCADデータから得られるベクトルを もとに各制御点における工具の姿勢を定めることにより, 工具姿勢の変化が少ない経路を生成するのが一般的とされてきた. カッティング作業においては,連続的な工具の位置・姿勢が必要となるため, 工具姿勢を考慮した後者の経路生成手法が適していると考えられる.
 しかし,カッティング作業には広い可動領域や切断のための高い送り速度などが 要求される.そのため,従来の工具姿勢のみを考慮した経路生成手法では, 作業の途中でロボットが可動範囲超えてしまったり, 低速でなければ動作できないといった問題が生じるため, 工具姿勢の変化だけでなく,ロボットの姿勢も考慮した経路の生成が必要となる.
 以上の背景から,本研究ではカッティング作業を対象に,ロボットと工具両方の 姿勢の連続性を考慮したロボット動作プログラムの生成手法について検討する. さらに,開発したシステムにより生成した動作プログラムを用いて実験を行った 結果をふまえ,本研究で提案する経路生成手法の有効性について報告する.


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Last updated on August 10, 2009 by www-admin@ims.mce.uec.ac.jp