金型による製品製造において生産性向上の鍵を握るのは,成型時における熱流制御の良否である.これに直接的な影響を与えるのは,金型に加工される冷却管回路であり,その設計および加工は金型設計・製作において非常に重要な工程の一つとなっている.また,金型製造や金型による製品製造に対するCAD/CAM/CAEの応用は,コンピュータの発達とともに広く行われるようになってきており,コンピュータにより熱伝導解析によって,冷却管の適切な配置を得られるようになってきた.ただし,多くの場合,その形状は曲線状となる.
一方,金型の冷却管の形成は,一般にドリルによる直穴加工で行われるため,冷却管の形状は折れ線状の穴形状にならざるを得ない.すなわち,曲がった穴の加工法が確立されていないため,冷却管の適切な配置が得られているにもかかわらず,それを実現できないのが現状である.このような問題を打破するため,曲がり穴加工法の開発は緊急の課題となっている.
我々は,放電加工機に圧縮コイルばね,ワイヤ,プーリなどの機械部品だけで構成された簡単な機構を取り付けることにより,放電加工用電極を曲率のある軌跡を移動させながら放電加工ができる機構を考案した.しかし,加工可能な曲がり穴の距離は短く,その延長が急務であった.
本研究では,考案した機構の改良を行った結果,加工可能な曲がり穴の距離を延長することができ,その応用として,なす角90度の直穴を曲がり穴で連結したL字形曲がり穴の加工に成功した.
T.Ishida