機械加工では,ドリルなどを用いた穴加工法が古くから確立されており,機械技術者の間では,当然のように、穴加工とは直穴を加工することと理解している.しかし,このことは,直穴がふさわしくない事例に対してさえも直穴が駆使されてきたことを物語っている.
その例として,油空圧機器の管路や金型の冷却管回路があげられる.これらの管路はドリルで加工されるため,その形状は単一あるいは複数の直穴を連結した折れ線状となる.これにより生じてしまう直穴どうしの接合部は,管路の急激な角度変化部分にあたり,作動流体の圧力損失の原因となる.さらに,直穴加工のみでは,管路を任意の場所に配置できない.これは,油空圧機器に対しては,小型化する際の障壁となり,また,金型の冷却管回路に対しては,理想的な配管で対応ができず,生産性向上の障害となっている.このような問題を解決するためには,曲がった穴の加工方法の確立が必要である.
我々は,放電加工機に圧縮コイルばね,プーリ,ワイヤなどで構成された機構を取り付けることにより,電極を曲率軌跡上を運動させながら放電加工を行うことできる装置を考案し,曲がり穴の加工に成功した.しかし,この装置では,事実上,電極の運動する曲率軌跡,すなわち,曲がり穴形状を多様化することは困難であった.
そこで本研究では,このような問題を克服すべく,考案した機構にスライダクランク連鎖を導入することによって,様々な曲率をもつ曲がり穴の加工を可能にした.
T.Ishida