マイクロV溝を利用した微小部品の直接接合
Direct Bonding of Small Parts by Means of V-Shaped Microgrooves
宮川 治,ナッタポン・ソウスウィッツ,竹内芳美,沢田 潔,河合 知彦,佐田登志夫
精密工学会誌 65巻 7号 (1999.7) 987-991.

微小部品同士の接合には通常,接着剤などを用いている.しかし,接着剤を使用した接合では接着剤の硬化に時間を要するために微小部品同士の正確な位置決めが難しい.さらに,接着剤の膜厚により接合精度の低下を引き起こし,微小部品のため,狭い接着面積にならざるをえなく,そのために接合強度が弱いという問題もある.
このような問題の解決策として,現在水素結合を利用した接合方式が研究されている.この方法は部品同士を表面親水化処理すると,無加圧でも1000℃以上の熱処理で表面酸化膜を介した接合が可能になるというものである.しかし,接合部品を高温雰囲気の中に置かなくてはならず,装置は大掛かりになる上,高精度の位置決めを行いつつ接合するのは困難である.
そこで本研究では,ブロックゲージなどで見られる高い平面度の鏡面同士が凝着する現象に注目した.超精密切削加工を用いて微小部品の接合面に面粗さレベルの大きさのマイクロ凹凸V形状を多数形成し,それらを接着剤なしで直接はめ合わせる接合法であるこの接合法では正確な位置決めができると同時に,V形状によるくさび効果と互いの接触面における凝着現象によって容易に高強度の接合が可能になる.
接合面が溝同士のはめ合わせになるので,ねじりやずれなどを起こすことはなく,接合後に位置は狂わないという利点がある.さらに,V形状をクロス状に配置すれば自動的に正確な位置決めが可能となる.
ここでは,これまでのマイクロ切削加工の経験に基づき,加工の容易な一方向からなる平行V溝を用いた接合法を実験的,解析的に研究を行った.

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1999/07/15, by O.Miyagawa