6軸制御角隅加工

葉 閣斉 (Geqi Ye)

1. はじめに

NC工作機械は,同時に多数の軸を制御して,複雑な曲面を高精度で迅速に加工することを目標として開発された.今や機械工場の合理化・省力化に重要な役割を担う.多品種中少量生産の機械工場の自動化には欠くことのできないものとなっている.
ボールエンドミルを用いて自由曲面を切削する場合には,回転工具は回転軸に対して対称なので工具の先端部分が半球状になっている.特に角隅形状では幾何学的に回転工具では切削不可能である.このような形状を加工しようとすると,現在は主に型彫放電加工が行われている.しかし放電加工では,切削加工と比較して加工速度は低いし,実際の加工とは別に,対象の逆形状の電極を加工しなければならない.これらの理由より,放電加工に変わる高効率・短時間で加工可能な新しい方法が望まれている.
 6軸制御では,工作物に対する工具姿勢・方向を完全に制御することが可能になるので,回転工具を使用しては加工困難な形状でも,容易に切削可能となる.製品形状の多様化が進む今日では,6軸を制御する工作機械の利用価値が高まりつつある.そこで本研究では3次元CADで定義した形状を基に加工する6軸制御用システムの開発を目的とする.

2. 6軸加工ソフトウェアの概要

(2.1) 加工ソフトウェアの流れ
 6軸制御加工のシステムはメインプロセッサとポストプロセッサで構成される.メインプロセッサでは定義された形状に対し,ワーク座標系における6軸制御のCL−データを自動生成する.ポストプロセッサは、機械の構造幾何情報・取り付け位置情報・加工情報等を読み込み,メインプロセッサで生成されたCLデータを各種工作機械に適合したNCデータに変換する.
(2.2) 角隅加工の切削領域の決定方法
目的形状が直角コーナの場合,荒加工ではフラットエンドミルを使用する.仕上げ加工の対象形状として,残留コーナRをとりあげる.これは回転工具を用いる加工法の制約である.もし残留コーナRを取り除くような方法が実現できれば加工できる形状の自由度が大きく広げられる.
 実際の加工条件を考えると,6軸制御によるヘール加工では毎回の切り込み量はミクロン・オーダであり,ピックフィード量を大きく取れないため,切削対象となるコーナR部の分割数を大きく取らなければならない.小さな半径のフラットエンドミルを使用しても,角隅加工用のデータ量が膨大になってしまう.そこで,荒加工で使用した工具を考慮し,残留コーナを近似した部分のみを切削対象とする.その結果,必要のないデータを除去することができる.このような処理をすることによって残留コーナ形状の最適な切削幅を求めることができ,角隅を能率よく加工することが可能になる.

3. 加工実験

 6軸制御CAMシステムによって生成された6軸制御NCデータの有効性を確認するためヘール加工の切削実験を行った。加工には100×100×100mmのケミウッド材を使用した.今回の実験では,φ12mmのフラットエンドミルを使用して荒加工を行った.この結果,角隅残留コーナRの部分には約6mmの円弧が付いていることになる.様々な誤差を考慮して計算上では残留円弧を6.5mmとしてヘール加工用CLデータを作成し,仕上げ加工を行った.実験の結果,目的形状を正しく加工することができた.

4. 結 論

 3次元ソリッドモデルを用いて,6軸制御角隅加工用のシステムを開発し,以下の結論を得た.
(1) 6軸制御による角隅加工の切削方法を提案した.
(2) 残留コーナ形状を考慮した角隅加工用の最適な切削領域を決定して,データ量を自動的に最少にすることができた.
(3) 3次元ソリッドモデル定義による3平面で囲まれた角隅形状に対して,6軸制御ヘール加工工具経路を生成した.
(4) 加工実験を行った結果,6軸制御角隅加工用システムの有効性を確認した.