オープンキャンパスに来てくださるお客様に,行っている研究の説明と,この研究室を訪れた記念という意味を同時に満たすお土産を製作する. 今まで加工や設計,工作機械の使い方(NCプログラム含む)の経験が少なかったものに,「ものつくり」を楽しむ力を育む機会になればよい. オープンキャンパス等で配布できるように,もらった人の笑顔が見れるようなものを作る. 立方体の檻の中にさらに立方体が入っている,しかも,外から入れたわけでもなく,まるでマトリオーシカのような,そんな不思議なものを作成しようということになりました.
名称 Cube(キューブ) 外形・寸法 外側の立方体:30mm×30mm×30mm 中の立方体:12mm×12mm×12mm 材料 アルミニウム(5052)と真鍮を使用 アルミは比較的柔らかく,加工性がよいことなどがあげられる。独特の色(やや白っぽい銀色)をしていて,比重(2.7g/cm^3)が比較的小さいので選択した. 真鍮(黄銅)は,鉄鋼やステンレス鋼と比べて切削性がよく,独特の美しい金色をうまく利用すれば,見栄えのする(高級感のある)ものができる。
治具の必要性 中側の立方体を切り離す際に不安定になるため,固定が必要. 製作物1個につき6面切削しなくてはならないので,決して大量生産向きではない.そのため,同時に複数個の被切削物を保持することを可能にすることで生産性をあげる必要がある. 構成治具は以下の3点から構成される.(名称は適当) @ おさえ A 背骨 B 土台 材料 鋳鉄(FC200) … @ おさえ,A 背骨 機械構造用炭素鋼(S45C) … B 土台 特徴一度に6個までの被切削物を保持することが可能.第6面加工時に,中の立方体が離れるのだが,そのまま加工すると中の立方体が暴走して危険なので,固定することが可能.実物写真はコチラ
エンドレス鋸盤や砥石切断機などを用いて,おおよその大きさに切ったあと,牧野フライス製作所製のA-55というマシニングセンタを用いて加工をした.加工内容としては,正面フライスを用いて寸法出しをし,穴加工をするプログラムを用い穴をあけた.ドリルはφ5とφ6とφ8を用いた. 追加加工として,φ5の穴にφ6のタップでめねじをきった.そして,@おさえの方には治具での固定を強くするために中心の穴から±15mm深さ3mmの溝(写真参照)をφ12mmのスクエアエンドミルでほった. なお,穴の位置,大きさ等は設計図を参照してください.
この図面をもとに,カットパスデータを作成するためにCAMソフト(後述)用にIMGSファイルに変換しました.水色の溝にA背骨が入り,灰色の部分に立方体が入ります.
SpaceControl社のSolidStationLEからカットパスデータを作成しました. (注)図は溝部分の仕上げ加工のカットパスの一部です.
A-55を使い,φ12mmの超硬ソリッドエンドミルを用いて,荒加工 主軸回転数 930rpm,テーブル送り 135mm/min 仕上加工 主軸回転数 1200rpm,テーブル送り 270mm/min で行った.そして,φ6,φ8のドリルで穴をあけた.
35mm×35mmの角棒等からエンドレス鋸盤等で切断し,正面フライスを用いて,30mm×30mm×30mmのブロックを作成した.
6個同時に作成するために,1個のCubeに対して1つのワーク座標系(G54〜G59)を設定し,治具に取り付けられた左下のCubeを測定すると計算で全部のワーク座標系が決定できるようにした.